CFRP加工

イントロ

当社(株)UCHIDAでは、1968年の創業から複合材料(FRP)の成形加工を行っており、主としてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の特徴である“軽くて・強い・腐食しない“を生かし次世代モビリティなどへ軽量化で貢献しています。今回は、専門的な立場でCFRPの機械加工について解説していきます。

CFRPとは?

Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック

カーボンファイバーはその名の通り『炭素繊維』のことですが、炭素繊維単体では細い糸で形状を保持できません。樹脂と合わせて使うことで、形状を保持し炭素繊維の軽くて強い特徴を生かすことが出来ます。このように繊維と樹脂など2種類以上の素材を組み合わせて新たな機能をもたらす素材を『複合材料』(Composite)と総称します。繊維と樹脂を組み合わせた素材を『FRP』(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)と呼び、使用する繊維が炭素繊維の場合は『CFRP』(炭素繊維強化プラスチック:Carbon-Fiber Reinforced Plastics)、ガラス繊維であれば『GFRP』、アラミド繊維であれば『AFRP』と呼んでいます。主な特徴である、『軽い・強い・腐食しない』を生かして、航空機や人工衛星、自動車、スポーツ、レジャーなど幅広い分野で先端素材『CFRP』が活躍しています。CFRPは、カーボンファイバー(炭素繊維)の方向に強度が依存するため、金属の様に等方性材料ではなく異方性材料として、すべての製品に材料設計が必要です。さらに繊維・樹脂を含めて設計の自由度が高いため専門性が必要です。それらの特徴や機能を理解できていないと、扱うことは難しい素材です。

カーボンスイングアーム

課題

メリットの多いCFRPですが、型が必要であること・材料コスト・製造が煩雑であることなどから生産性やコストが課題となっています。

CFRPの成形方法

オートクレーブ成形

RTM(Resin Transfer Molding)成形 

Va-RTM(Vacuum Assisted-RTM)成形

プレス成形

ハンドレイアップ成形

フィラメントワインディング成形

シートワインディング成形

引抜き成形

3Dプリンター

当社では■色の製法に対応しております。

用途や形状・ロッドなどにより様々な成形方法が存在します。

オートクレーブ成形法

CFRPの成形方法はロッドや形状・用途などによって様々存在しますが、ここでは材料の設計自由度も高く高品質な製品が製造できる代表的な工法である『オートクレーブ成形法』をご紹介します。オートクレーブ成形法などで作られた高品質なCFRPをドライカーボンということもあります。オートクレーブ成形法は、金型のように高価な成形型を必要とせず製品が製造できるため試作から少量生産向きの設備製法です。

オートクレーブ成形法CFRP部品製造プロセス

CFRPの切削加工・機械加工で押さえておくべき2つのポイント

CFRPの機械加工には特に注意すべき点が2つあります。

異方性を理解する

CFRPは繊維の方向に強度が依存する異方性材料であり、繊維と樹脂が複合化された素材です。特に機械加工においては、製造された部品内部がどのような繊維の方向・積層構成になっていて、マトリクスとして使用している樹脂にどんな特性があるのかをよく理解して加工を行う必要があります。繊維の方向や量・積層構成によって加工抵抗が異なることや樹脂によっても熱特性が異なることから、それらCFRP(複合材)特有のノウハウを理解できていないと適正な加工はできません。

ドライ加工(乾式)が前提

CFRPの機械加工には切削油等は使用できません。CF(カーボンファイバー)は、微小ですが吸湿する素材のため、油分が一度浸み込んでしまうと除去することができなくなります。外観では吸湿は視認できませんが、製品として長期使用していくと、浸み込んだ界面から層間剝離などに繋がる恐れがあり、取り扱いには注意が必要です。そのような環境下で製品を使用する際には、加工後に製品表面を塗装やシーリングによって保護し吸湿を防ぎます。

UCHIDAのCFRP加工へのこだわり

UCHIDAの治工具室 

マシニングセンタを用いたCFRP加工を行う部署『治工具室』では、CFRP成形に使用する成形型や検査治具・接着治具等の設計・製作と成形後のCFRP部品の二次加工を担っています。当社は、設計・解析から型製作・積層成形・二次加工・塗装・検査・試験とワンストップで対応しており、治工具室はモノづくりの最初の工程を担っています。

こだわり 成形型

CFRP部品において、成形加工は品質を左右する大事なプロセスですが、一番重要なプロセスは成形型の設計です。良い製品は型で決まります。当社では、幅広い分野の実績を生かし複雑な大型一体成型品などを得意としており、難しいご要望にもお応えできます。ワンストップの強みを生かして、後工程に配慮した『使いやすい型』を製作します。使いやすい型とは、製品構造を理解し、積層しやすい・成形時に温度ムラが少ない・取扱いに際して破損しづらい・持ちやすいなど、製作数量や型の素材に合わせて最適な型設計・加工を行います。モノづくりの一連のプロセスを理解することが大切です。

こだわり CFRP加工

CFRP機械加工と言っても、製品によってCFRPの中身も異なります。当社で製造するCFRP部品は、成形時に発泡体や金属をインサートしている構造部品も多く、機械加工では①CFRP異方性と樹脂の理解、②金属との複合化されたCFRP部品、それぞれ事前に加工方法を検証します。この様な複合化された複雑な部品でも、ドライ加工を基本として、穴あけ・ネジタップ・トリミング・3D形状加工など多くの加工実績があります。使用する工具もCFRPの特性を理解し、様々な特殊な工具を使い分けます。

まとめ

今回はCFRPのモノづくり概要から機械加工についてを解説しました。CFRPの加工にはCFRP自体の知識やノウハウが必要であり、部品構造が理解できていない状態で加工を行うと、トラブルが起きる可能性が高いのです。基本はドライ加工(乾式)となるため、金属加工など切削油を使用する機械では加工できない、などを踏まえてCFRPを熟知し実績のあるメーカーへの依頼が重要なポイントです。

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