イントロ
最近メディア等で、炭素繊維強化プラスチック『CFRP』という言葉を聞く機会が増えています。金属に代わる軽くて強い素材という紹介を見ることもあります。いったいどんな素材なのでしょうか。
概要
繊維強化プラスチック(FRP)は繊維を強化材として使用したプラスチックです。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)はその名のとおり、カーボン繊維で強化されたプラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics)の略で、CFRPはFRPの一種です。使用する繊維がカーボンであればC、ガラス繊維であればG、アラミド繊維であればAが頭について呼称されます。強化繊維と樹脂(プラスチック)を組み合わせて使用することから、『複合材:Composite』や『複合材料:Composite Material』と呼ばれています。今回は、成形方法の一種である『オーブン成形』について解説します。
CFRPの製造方法
軽くて強いことが特徴としてあるCFRPですが、成形方法には、製品の形状やロッド・構造などに合わせて数多く存在します。
CFRPの成形方法
オートクレーブ成形
RTM(Resin Transfer Molding)成形
Va-RTM(Vacuum Assisted-RTM)成形
プレス成形
ハンドレイアップ成形
フィラメントワインディング成形
シートワインディング成形
引抜き成形
3Dプリンター
当社では■色の製法に対応しております。
用途や形状・ロッドなどにより様々な成形方法が存在します。
高品質を実現するオートクレーブ成形法
オーブン成形を紹介する前に、CFRPの中でも高品質で高精度を実現する『オートクレーブ成形法』を紹介します。オートクレーブ成形で製造された高品質な製品は、ドライカーボンと呼ぶこともあります。これは、『プリプレグ』と呼ばれる樹脂が炭素繊維のシートにあらかじめ含侵された素材を1層1層、設計に合わせて型に積層し、真空パックを行いオートクレーブ設備で、加温・加圧を行いながら焼き固める製法です。
YAOKI Laminate 01
オートクレーブ成形とオーブン成形の違い
オーブン成形とは?
ひと言でいうと、オートクレーブ成形と同じ材料や副資材・プロセスを経て、成形設備をオーブンに変えた製法です。一般的には、温度ムラの少ない熱風循環型オーブンを使用します。『OOA成形』というフレーズを聞いたことがありますか?OOA・・・Out of Autoclaveの頭文字をとった言葉ですが、日本語では『脱オートクレーブ』という言葉として、聞いたことがあるかもしれませんね。高品質で高強度かつ安定した素材プリプレグによって設計とのバラツキが少ない製品が得られることなどから、航空機関連では主に、オートクレーブ成形が浸透してきました。一方で、オートクレーブ成形もメリットばかりではありません。
オートクレーブ成形のデメリット
デメリット①
設備の初期投資(コスト)
デメリット②
1成形あたり一般的に4-6時間かかる(生産性)
そんなオートクレーブ成形ですが、デメリットを補う設備や製法が多く開発されており、使用する素材も特徴に多くのバリエーションが存在します。『オーブン成形』はOOAの中でも比較的扱いやすい製法の一つです。
オーブン成形の特徴
- オートクレーブ成形と同じプリプレグ材・副資材が使用可能
- 設備の導入コストがオートクレーブ装置と比べ安価
- オートクレーブと同様繊維の配向を自在に設計可能
- オートクレーブと同様大型製品にも向いている
オートクレーブ成形に劣る点
- ①複雑な形状はオートクレーブ成形の方が得意
② オートクレーブ成形とは異なり加圧しないため、物性や機械特性が劣る
製造方法
多くの特徴をもつ素材『CFRP』ですが、製品形状や製造ロッド・構造などによって様々な成形方法が存在します。
当社では、幅広い成形方法に対応でき試作開発からワンストップで対応が可能です。
サマリー
ここでは、CFRPの中でも比較的初期投資が低く、品質の高い製品が製造できる『オーブン成形』について解説しました。オートクレーブ成形と同じプロセスで、成形設備がオーブンに代わるというイメージです。とはいえ、プリプレグを保管する冷凍庫や、異物混入を防いでプリプレグを積層するクリーンルームなど色々な設備・環境が必要なことは、オートクレーブ成形と同じです。先端素材と言われる素材なので、まだまだ情報も少なく全てを理解することは難しいと思います。大まかなCFRPの特徴は、『軽い、強い、錆びない』です。魅惑の素材と感じるCFRPですがメリットの反面、製造の煩雑さやコスト・量産性・リサイクル性などデメリットもあります。デメリットも理解した上で、GFRP・CFRP部品の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
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