イントロ
自動車や航空機の燃費向上による航続距離拡大や人の身近で使う物など多くの場面で軽量化に期待することが多いと思います。今回は『軽量化のメリット』について解説します。
概要
軽量化には、大きく『素材置換による軽量化』と『構造変更による軽量化』に分けられます。ここでは、『軽量化によるメリット』と『素材による軽量化』について掘り下げてみます。
軽量化のメリット
自動車などのモビリティでは、車体重量を軽くすることにより走行に必要なエネルギーが少なくなるため、燃費が向上し、同じ量の燃料でもより長い距離を走ることができます。※軽自動車の燃費が良いのはこの原理によるものです。
航空機の世界でも同じことが言えます。例えば、人を乗せて空を飛ぶ乗り物の場合、軽い方が『低燃費』だというと、イメージがしやすいのではないかと思います。最近の話題で言うと、『月面探査』というワードをメディアで見かけることがありませんか。月まで物資を移送するのは、凡そ1億円/kgのコストが必要と言われています。コスト削減のため、1gでも軽量化した方がいいということがわかります。自動車やバイクのレースの世界も同様に、0.01秒を争う世界なので軽量化が必須です。
軽くて強い素材の代名詞『FRP』
FRP(Fiber Reinforced Plastics)は繊維強化プラスチックです。マトリクスにプラスチックを用いて軽量化や高い成形性を有し、繊維で強化(一般的にはガラス繊維)することによって高強度化・高剛性化を実現させた素材です。樹脂と繊維を複合化させた素材と言うことで、複合材料(英:Composite)とも呼ばれます。主にガラス繊維を用いるため、GFRP(英:Glass Fiber Reinforced Plastics)という呼び方をすることもあります。
FRPの最高峰『CFRP』
FRPの中でも更なる軽量化・高強度・高剛性化を実現させたのが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)です。CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)はその名の通り炭素繊維(カーボンファイバー)で強化されたプラスチックの略です。
複合材『FRP』のメリット
FRPの最大のメリットは軽くて強いことです。樹脂成型品と同様で成形の自由度が高く、金属の用に等方性材料ではなく、繊維の方向に強度が依存する異方性材料なので、同じ厚さでも必要な方向に強度を確保でき、強度の不要なエリアは弱くすることもできる設計の自由度が高いことも特徴です。従来のプラスチック製品と比べ、高強度化できることにより肉厚を減らしたり、構成部品が不要になったり、構造を一体化したりと様々なメリットがあります。特に炭素繊維強化プラスチック『CFRP』は金属と比較しても低比重で高強度、尚且つ錆びないというメリットがあります。※CFRPの比重は1.5-1.7g/㎤です。
CFRPとステンレスの重量比較 ※下記画像は、同サイズ・同板厚
※使用する繊維によって引張強度は3000-7000MPa、引張弾性率は50-900GPaと幅広く、使用する用途に応じて設計の自由度が高いことも大きな特徴です。その他、振動減衰性/導電性/疲労特性/X線透過特性などが挙げられます。低比重で高強度という点から、軽量化に大きく貢献する素材であることがわかります。
使用する繊維がカーボン繊維(炭素繊維)であればC、ガラス繊維であればG、アラミド繊維であればAが頭について呼称されます。強化繊維と樹脂(プラスチック)を組み合わせて使用することから、『複合材:Composite』や『複合材料:Composite Material』と呼ばれています。
製造方法
多くの特徴を持った素材『CFRP』ですが、どんな製法で製品が生まれていくのでしょうか。高品質なCFRP製造の代表『オートクレーブ成形法』の一般的なフローを紹介します。
オートクレーブなど高品質なCFRPを成形できる設備によって生み出された製品をドライカーボンと呼ぶこともあります。
サマリー
FRP(特にCFRP)を用いた素材による軽量化手法について解説しました。先端素材と言われる素材なので、まだまだ情報も少なく全てを理解することは難しいと思います。大まかなCFRPの特徴は、「軽い、強い、錆びない」です。魅惑の素材と感じるCFRPですがメリットの反面、製造の煩雑さやコスト・量産性・リサイクル性などデメリットもあります。デメリットも理解した上で、GFRP・CFRP部品の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
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