概要
CFRP(カーボンファイバー/炭素繊維強化プラスチック)の最大の特徴は、軽くて・強い・腐食しないことです。この特徴を生かし、幅広い分野で先端素材CFRPは活躍していますがCFRP試作開発やCFRP成形品の事例はあまり目にする機会が少ないのが現状です。
イントロ
当社では、2013年に創業45周年を迎え、海外の展示会向けにCFRP製フィギュア「カールボンヌ未来」を製作しました。(株)UCHIDAは、前進の(有)内田工芸でマネキン製造が起点となっており、埼玉県を拠点に関東圏・日本・海外と事業を拡大してきました。当社の歴史や技術は本作品の映像で表現しています。今回は、CFRP試作開発の代表事例として製作工程を解説していきます。
プロセス
モデルデータ作成 スケッチ
まず、はじめにオリジナルのキャラクターをスケッチからおこし、データ化します。展示品としてのサイズ感、ポージングや大まかなディテールを決めていきます。
モデルデータ作成 データ化
大まかなイメージができると、次にCADを用いて3次元データを作成していきます。データを作りながら部品構成や組立て方法などを決めてモノづくりをデータに反映していきます。
成形型モデリング
製品データが完成すると成形型のモデリングを行っていきます。型の分割構造など、マシニングセンタや抜け勾配・積層/成形勝手・破損しないか等の製造制約を加味しながら作成します。
成形型の加工 ①直彫り型
モデリングされたデータを用いて、マシニングセンタによる型加工を行います。
型の表面処理
切削を終えた型に、樹脂が予備含侵されたプリプレグ(Pre-preg)と呼ばれるカーボン(CFRP)を直接積層してしまうと、型に貼り付いてしまいます。そのため、調理用のフライパンに施されているテフロンコートのように、型の表面を樹脂でコーティングし、離型剤を施工します。※型の表面が黄色くなっている部分が樹脂の色です。
成形型の加工 ②マスター/反転型
成形型をブロックから直接切削して製作する①直彫り型とは異なり、製品と同じ形の型(原形やマスター型と呼ばれます)を加工し、マスター型から反転型を製作することも可能です。これらは、製品のロッドや形状・精度・成形勝手などを考慮し選定します。
プリプレグ材の裁断
カッティングプロッターを使用してプリプレグシートを裁断します。プリプレグ材料は食品と同様で生ものであり使用期限があります。一般的にマイナス18℃以下での冷凍保管が必要です。
積層作業
裁断されたプリプレグシートを職人が1層1層、設計に合わせて型に貼付け積層していきます。徹底した品質管理のもと、積層作業中に毛髪などの異物混入がないように、清浄度管理されたクリーンルームにてクリーンウエアを着用して作業します。プリプレグシートは1層0.08-0.7mm程度の薄い素材ですが、後のオートクレーブによる成形工程中に層間に空気が残っていると、空隙や層間剝離などの不具合につながるため1層ごとに真空引きを行い脱気します。
バギング作業
積層作業を終えると、離型フィルムやブリーザークロス・バギングフィルムなど専用の副資材を配置して真空引き(バギング)作業を行い成形前の準備は終わりです。真空バックをシールしているシーラントテープ(画像黄色い部分)や鋭角な形状の端部が破れてリークすることが無いようにしっかり封止します。
オートクレーブ成形
オートクレーブ装置はひと言でいうと圧力容器です。
圧力 管内を加圧し積層されたプリプレグシートを型に押し付け内部に残存する空気を脱気する役割をします。
温度 成形では、CFRTS(熱硬化性樹脂を用いた炭素繊維強化プラスチック)の場合、加熱することにより樹脂が硬化反応し固まり(硬化)します。CFRTP(熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維強化プラスチック)の場合は、加熱することで溶融し、冷却させて固まります。※チョコレートのようなイメージです。
真空 成形中は、一般的にバギングされた製品は真空を維持し脱気を行います。成形中の履歴は記録計を用いて、紙もしくはデータ媒体で残しトレーサビリティとしてお客様への提出や自社規定に基づき保管します。
圧力・温度・真空
圧力、温度、真空を製品に合わせてプログラミングし成形を行います。
仕上げ・二次加工・塗装
オートクレーブ成形を終えると、型から製品を外す脱型作業を行い、製品を既定の位置でトリミング、穴あけ、表面仕上げ、塗装を行い製品が完成します。
検査
ものづくりが終わると、最終検査を行います。製品の外形状や寸法測定、穴計測など、図面やお客様のご要望に合わせて検査を実施します。
組立
最後に、仕上がった各パーツを組み立てて「カールボンヌ未来」の完成です。
まとめ
今回は45周年記念の作品【カールボンヌ未来】の製作工程を解説しました。カーボンファイバー、ドライカーボン、CFRPの試作開発ものづくりが少しイメージできたでしょうか。この作品は、下記動画で詳しくプロセスを紹介しています。併せてご覧ください。
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