イントロ
炭素繊維強化プラスチック『CFRP』という言葉を目にする機会が増えています。金属に代わる軽くて強い素材として採用が広がっています。いったいどんな素材なのでしょうか。
概要
炭素繊維(カーボンファイバー)は日本が発祥の技術(素材)であり、一般的にはマトリクスとしてプラスチックと複合素材(複合材料)とすることによりCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics):炭素繊維強化プラスチックとして採用が広がっています。今回は、CFRP成形手法の一つであるRTM・HP-RTMについて解説します。
炭素繊維強化プラスチック『CFRP』の特徴
大きな特徴は『軽い・強い・腐食しない』ですが詳細は下記コラムを参照ください。
CFRPの製造方法
多くのメリットを持つCFRPですが、実際どんな製造方法で作られるのでしょうか。ここでは代表的な成形方法である『オートクレーブ成形』とオートクレーブ成形に使用するCFRP素材『プリプレグ:Prepreg』を下記コラムでご紹介しています。
RTM・HP-RTM製法
RTM製法
RTM製法は(Resin Transfer Molding)の略称で樹脂注入成形です。オートクレーブ成形によるプリプレグ素材の様に、あらかじめ炭素繊維基材に樹脂が予備含侵されている素材とは異なり、設計に合わせて配置/賦形させた繊維基材(プリフォーム)を、一般的には雄雌一体の金型内にセッティングし主剤と硬化剤を混合した樹脂を含侵させて加熱硬化させて製作する手法です。オートクレーブ成形品との大きな違いは、オートクレーブは試作から少量生産・大型で薄肉構造品向きであるのに対して、RTMでは金型を要しある程度安定した品質が得られることから中量生産向きと言えます。雄雌金型内で成形することから急激な板厚変化などへは対応が難しく、形状的な制約が多いともいえる製法です。
HP-RTM製法
HP-RTM製法は(High Pressure Resin Transfer Molding)の略称で高圧樹脂注入成形です。
専用のプレス機と樹脂注入器・主剤と硬化剤を衝突混合させるミキシングヘッド・ミキシングヘッドが搭載可能な金型を用いることによりHP-RTM製法が実現できます。この技術は、BMW社の電気自動車『i3』のフレームやシャーシに採用された工法であり、従来のプリプレグを用いたオートクレーブ成形の最大のデメリットであった成形時間(4-6時間程度)を、高速硬化型樹脂の開発もありわずか3分程度で金型から取り出すことを可能にした製法です。※当時は業界にも大きな衝撃が走りました。また、プリプレグ素材の材料よりも低コストで、冷凍保管を要する設備費・管理費を必要としないため低コスト化CFRPにも大きく貢献した製法です。
メリット
高品質・ハイサイクル(現在では樹脂の改良も進み1-1.5分程度で金型から製品を取り出すことが可能)・中/量産向き・マテハンロボットを用いたオートメーション化が可能
デメリット
高価な設備投資/金型費・成形条件出しのカンコツ。また、高圧で繊維基材のX/Y/Z方向へ樹脂を含侵させていくため、繊維基材が蛇行しやすいことや、基材内部の細かな空気(ボイド)を押し流す工夫などCFRP特有の繊維強度を発揮させることが難しいこともあります。現在では金型を完全に閉じきらずに、少し開けた状態で樹脂を注入することで不具合を減らし、低圧で成形を可能するような『Gap-RTM製法』や基材に混合樹脂を塗布してから金型へ投入する『WCM-RTM:Wet Compression Molding』など基材や形状・成形条件に合わせた各種成形方法の開発が進んでいます。
サマリー
今回はCFRP成形方法の一つである『RTM・HP-RTM』について解説しました。製品特徴や素材・形状・大きさ・ロッドなどを考慮して適した成形方法を採用します。製品設計の段階で製造方法を検討することは、なかなか難しいと思います。
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