CFRPとは?『CFRPの特徴や成形方法、用途について細かく解説』

イントロ

最近メディアで良く自動車や飛行機などでカーボン・CFRP・複合材料・軽量化の用語を聞くことが多いと思います。金属に代わる軽くて強い新素材という紹介を見ることもあります。いったいどんな素材なのでしょうか。

 

概要

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)はその名の通り炭素繊維(カーボン繊維)で強化されたプラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics)の略です。大きな枠では繊維強化プラスチックFRP(Fiber Reinforced Plastics)であり、用いる繊維がカーボンであればC、ガラス繊維であればG、アラミド繊維であればAが頭について呼称されます。今回はCFRPの特徴や用途について解説します。

炭素繊維の特徴

まずはじめに複合材料(Composite)について解説します。

複合材料とは

複合材料とは2つ以上の異なる材料を組み合わせ単一材料では得られない特性を有する材料のことをさします。身近なところでは、鉄筋コンクリートなどもコンクリートを鉄筋で補強することにより引張応力を向上させた複合材料になります。FRPではプラスチックだけでは得られない強度や特性を炭素繊維などで補強することにより、プラスチックと比べて軽量で強靭な構造物を作ることが可能になります。複合材という呼び名は聞き慣れない専門用語ですが、昔から使用されてきた技術です。

炭素繊維の分類

炭素繊維は大きく分けて原料の異なる2種類に分類されます。

PAN系

アクリロニトリルを原料とし、PAN繊維合成・耐炎化工程・炭素化工程・黒鉛化工程・表面処理工程・サイジング処理工程を経てPAN系炭素繊維は生成されます。主に自動車や航空機などの構造部品に使用されています。

ピッチ系

石炭や石油・コールタールの副生成物(ピッチ)を原料として、高温で炭化させる工程・表面処理工程・サイジング処理によりピッチ系炭素繊維は生成されます。主に産業用ロボットアームや人工衛星部材に使用されています。

樹脂の特徴

マトリクスとして使用する樹脂についてご紹介します。

熱硬化性樹脂

熱硬化性樹脂は文字通り熱を加えることで反応し固まる(硬化)樹脂のことです。ポリエステル・エポキシ・フェノール・ビスマレイミド・シアネート・ポリイミドなど、製品に求められる耐熱性や特性によって樹脂を選択し使用します。

多くの構造部品は熱硬化性樹脂を用いて製造しています。

熱可塑性樹脂

熱可塑性樹脂は熱を加えることで溶けて、冷やすと固まる樹脂のことです。(チョコレートのイメージです)一般的なエンジアリングプラスチック(PP/PA/PC/TPU)やスーパーエンプラと呼ばれる(PEI/PPS/PEEK/PEKK)など製品に求められる特性に合わせて樹脂を選択し使用します。

早い成形時間やリサイクル性などの観点で使用することもあります。

特性/物性

ここまで素材について説明してきましたが、CFRPにはどんな特性や物性があるのでしょうか。更に掘り下げていきます。

異方性材料

金属やプラスチックはどの方向も同じ強度である”等方性材料”ですが、CFRPなどの繊維強化プラスチックは、繊維の方向に強度が依存する異方性材料のため、繊維の種類や量・方向によって性能が異なるため、必ず材料設計が必要となります。

積層方向をアレンジすることにより、金属よりも高強度・高剛性にすることも可能となります。

金属は形状変更によって剛性を上げますが、CFRPは積層配向によって強度・剛性をアレンジできます。※同じ形状でも特性の異なる製品が実現可能。

耐熱温度

炭素繊維自体は1000℃以上の高温で炭化し生成されるため、耐熱温度はマトリクスとして使用する樹脂に依存します。

低比重

CFRPの比重は1.5-1.7g/㎤と低比重です。金属と比較しても軽量化に貢献できる素材として注目されている理由がわかります。

高強度・高弾性

使用する繊維によって引張強度は3000-7000MPa、引張弾性率は50-900GPaと幅広く、使用する用途に応じて設計の自由度が高いことも大きな特徴です。

寸法安定性

低熱膨張率を有する素材です。繊維の種類や方向によっては、ゼロ熱膨張を実現することも可能な素材です。マトリクスとして使用する樹脂は一般的に熱膨張率プラス側に働きますが、炭素繊維自体はマイナス側の素材なので、組み合わせ次第ではプラスチックではありえないことも実現ができる素材になります。

その他特徴

メリットを上げると長くなりますのでここでは、その他の特徴を簡単に解説すると、錆びない/振動減衰性/導電性/疲労特性/X線透過特性などが挙げられます。

用途

CFRPの特徴について解説してきましたが、実際どんな製品に採用されているのでしょうか。事例を紹介していきます。

航空機

現在皆さんも乗ることができる飛行機では、Boeing787という機体に多くのCFRPが使われています。機体重量の約50%がCFRPでできています。大幅な軽量化に貢献したことで、この機体は従来機よりも燃費が良く巡航速度も高速で長距離路線を効率的に運行できることを期待されています。実際に乗ってみると、離陸の際に主翼が大きくしなっていることが視認できます。カーボンの強度としなりを実際に見るとこれまでの飛行機とは全く違う構造であることが体感できます。

自動車・バイク

自動車やバイクの世界では、主にレース用(F1やGT)の車両で見ることができます。0.01秒を争う世界では、軽量化が必須となるので多くのCFRP部品が採用されています。一般道を走る自動車となると、ランボルギーニや、レクサスLFAなどのスーパーカーには構造品など多くのCFRP部品が採用されていますが、大衆車としてはオプションパーツ(ボンネットやルーフ・リアスポイラーなど)に限定されて採用されています。これは今時点では、量産性やコストに課題があるCFRPの現実です。

BMW社の電気自動車『i3』には、フレームなど多くの構造部品にCFRPが採用され、業界でも注目を集めました。CFRPの生産性やコスト課題を克服し大衆車として商品化されました。一番大きな要因は、成形方法を開発したことにあると考えられます。

従来航空機などのオートクレーブ成形法から、プレス機と樹脂注入機を併用した『HP-RTM』成形法により、成形に4-6時間かかっていた生産が1.5-3分で完了し圧倒的に生産時間を短縮することに繋がりました。

スポーツ・レジャー

趣味の世界になると、実はCFRP製品って結構多いです。テニスラケットやゴルフシャフト・釣り竿・アーチェリー・自転車・カヌー・ドローン・ラジコン・野球のバット等々、CFRPの特徴を活かした製品は色々な場面で体感することができます。

最近では、トレッキングやキャンプ用品などにもCFRPの商品を目にすることも増えてきました。

成形方法

様々な分野でCFRPの適用が増えていますが、CFRPの成形方法は様々です。

製作品の大きさ・形状・強度・製作量などによって適した成形方法が異なります。

代表的な成形方法:オートクレーブ成形/プレス成形/RTM成形/オーブン成形/シートワインディング成形/フィラメントワインディング成形/引き抜き成形/3Dプリンター

サマリー

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)について解説してきました。先端素材と言われる素材なので、まだまだ情報も少なく全てを理解することは難しいと思います。大まかな特徴は、『軽い、強い、錆びない」です。魅惑の素材と感じるCFRPですがメリットの反面、製造の煩雑さやコスト・量産性などデメリットもあります。デメリットも理解したうえでCFRP部品の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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